第67章 想い

さりあさんの恋人は女性だった？

確かに、一度も＂彼氏＂とは言っていなかった気がするけど……。

「彼女はね、レズだったから。あたしもバイである事は言わずに、レズとして彼女と恋愛してた」

「……隠す必要が、あるんですか？」

軽々しく聞いていいものなのかどうか、分からない。

全くの未知の世界で……。


「色々ね、そこの間でもあるのよ。女性が恋愛対象になるというのは嘘ではないから、わざわざ本当の事を言って関係を悪くする必要もないってこと」

「そうなんですか……」

「大好きだった。愛していた。愛し合っていた。
でも、愛が大きくなればなるほど、辛かった」

「愛し合っているのに……辛かった……？」

「どれだけ愛していても、あたしにはペニスはないし、彼女が妊娠する事もない。結婚も出来ない。周りに公にも出来ない。あたしでは彼女を本当に幸せにする事が出来ない……そんな風に思って、勝手に彼女の事を可哀想に思って、試すように男と寝たりしたの」

愛する人といるのにそんな風に感じてしまうのは、私も一緒だ。

私と居ても涼太は幸せになれないと、そんな事ばかり考えてしまうから。

もっと、汚れてない普通の子と恋愛して欲しいと思う。

……でも、離れられない。
離れようと思えば思うほど、好きで好きでどうしようもなくなるの……。

「結局、一番してはいけない形で彼女を裏切って、あたしたちの関係は終わっちゃったけどね。でも、彼女はあたしに愛を教えてくれた。……本当に、感謝してる」

少し……私に似てる。

さりあさんが悩んでいるものとは異なるけど、私も、涼太から色々なものを教えて貰っているから……。

でもどうして今、この話をするんだろう？
私に、さりあさんの悩みを解決してあげられるとは思えないし、さりあさんも解決策を求めて話しているのではないような気がする。

「……この話をしても嫌悪感丸出しにされなかったのはリョウタ以来かも」

涼太も知ってるんだ。

「どっちもイケるんだ、くらいの軽いノリでしか言ってないから、リョウタはどこまで信じてるかは分からないけどね」

どうして、この話を？
なんだか、胸がざわつく。