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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い


思いがけない質問にすぐには反応出来ずにいた。

「言いたくないならいいよ。気になっただけ」

答えようとしたけれど、先にそう言われてしまった。

「あ、いえ、これは……学校で階段から落ちて骨を折ってしまったんです」

「そう、それならいいんだけど……っていうか良くないね。部活するのに」

「まだ、暫くはかかりそうです」



さりあさん、以前にリビングで話をした時……お父さんもお母さんも離れていっちゃう、って言ってた。

さりあさんも、ご両親は近くにいないんだろうか。

「さりあさん、もし、差支えなければ教えて欲しい事があるんです」

「ん?」

「ご両親には……会ってるんですか?」

「会ってないよ」

即答。

でも、拒絶の色は見えない。嫌々答えている空気ではない。
事実だけを無駄なく伝える、そこには感情がない。そういう感じだ。

「会いたいとは……思わないんですか」

「ん~……」

しばしの沈黙。

「……会いたいって言うか……なんで捨てたのかな、っていうのは聞いてみたいけど」

「そうですか……」

「そこを受け止められないとさ、自分自身が誰からも必要とされない人間だって思ったまま、進めなくなっちゃうんだよね」

「……」

自分が、誰からも必要とされない……。

「でも、前の恋人に出逢って、あたしは変われたんだ。あの人に逢えなかったら、多分今でもその思いは消化しきれずに、両親に会いたいって強く思ってたかもしれない」

「恋人に……」

「親に植え付けられたものってさ、簡単にどうにかできるもんじゃないよ。
だから、直接会って話せるならそれが一番いいんだと思う。
会えないなら……自分なりに、落としどころを見つけていくしかないよね」



でも、自分自身が誰からも必要とされない……っていう思いは、以前よりもずっとずっと薄くなった。

自分に価値は見いだせないままだけれど、今は、涼太の隣に居たいと思うから。

なんとか、前に進まなければ、前に進みたいという気持ちが出てきているのを感じているから。




でもひとつだけ、もし叶うのなら……

……お父さんに、会いたい。



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