第67章 想い
突然の青峰さんの反撃、予想だにしていなかったさつきちゃんは大きくバランスを崩して青峰さんの上に覆い被さる形になった。
青峰さんの腕が、さつきちゃんをガッシリと捕まえる。
「ちょ、大ちゃん! はーなーしーてー!」
さつきちゃんは両足をバタバタとさせているけど、青峰さんには全く効果ナシ。
起きる気配も、さつきちゃんを離す気配もない。
30㎝以上の身長差がある上、あの鍛えられた腕に抱きしめられては逃げる事は困難を極めると思う……。
「もー! 大ちゃんってば! 起きてよ!」
これはちょっと手助けしなきゃいけないかな……とベッドに近寄ろうとした時。
目が合ってしまった。
青峰さんと。
青峰さん、起きてる。
さつきちゃんは気付いてない。
「さつき……ウルセー……」
そう言って、青峰さんは胸のもっと深くに、さつきちゃんを閉じ込めた。
その表情、愛おしいものを見る目つき。
涼太と同じ、優しい目。
青峰さんって、もしかして……。
知らなかった彼の想いを目の当たりにして、私は何も言う事が出来なかった。
「も、もう……ホント、いい加減にして」
そう言ったさつきちゃんの耳が赤く染まっている。
「オレは眠いんだよ……」
その甘い空気に、私がここにいるのが申し訳ない気がして来てひたすらに涼太を揺すった。
涼太、涼太お願い起きて。お願い私どうしたらいいの。
「みわちゃん……」
さつきちゃん、ごめんね。
私は助けてあげられないよ……!
「みわちゃん、ごめん……」
そう言って抵抗をやめ、青峰さんの胸に頭を預けたさつきちゃんの身体を、彼の腕が優しく包んでいた。
わ、わ、わ。
「……お、おやすみ、さつきちゃん」
それだけ言って部屋の電気を消した。
カーテンが半分開いているせいで、部屋は真っ暗にならずに済んでいる。
本当なら月明りでもう少し明るくなりそうだけど、今日はあいにくの雨。
部屋にはシトシトと降りしきる雨の音と涼太の寝息だけが静かに響いていた。
私は一体もうこのままどうしたらいいのか分からないまま、涼太の隣に寝転ぶ。
幸いにも、眠気はすぐに全身に纏わりついてきた。