第67章 想い
恋って、不思議。
恋ってなんなんだろう。
いつの間にか惹かれていて……。
私のこれは、恋なのかな。
気が付いたら、彼がいないことなんて考えられなくなっていた。
涼太の……顔が見たいな。
2階に行けば、すぐに会えるんだけど。
「みわちゃん、手がそれじゃ不便でしょ、何か手伝うよ」
「あ、ううん大丈夫!
右手が使えるから、結構なんでも出来ちゃうんだ」
意外にも、左手が使えないというのにも慣れるもので。
今日みたいに雨が降っていたりすると、訳もなく少し痛むのが嫌だけど。
「髪乾かしてあげるね」
さつきちゃんは優しい手つきで、ドライヤーをかけてくれた。
「ありがとう」
ドライヤーの温風が、疲れた心まで癒してくれるかのようで。
さつきちゃんの柔らかい手の感触が、もう記憶にないお母さんの手みたいで、気持ち良くて、ゆっくり目を閉じていた。
皆が幸せになれればいいのにな。
そんな事をふと、考えた。
さつきちゃんの部屋に行くと、ベッドの上で大の字になって寝ている青峰さんと、テレビの前で考え込むように手を顎に当て、画面に集中している涼太。
「もー、大ちゃんまた私のベッドで寝て!」
そう言いながらも、彼を起こすことはせずに布団を掛けてあげる姿が、恋する乙女のものに見えてしまった。
「きーちゃん」
涼太は画面に集中したまま、反応しない。
凄い集中力。
画面に再生されているのは、NBAの試合だ。
「きーちゃんってば!」
「……ん? あ、オカエリ」
「もー、ずっと呼んでるのに!
大ちゃん寝ちゃったし、きーちゃんお風呂に入って来ちゃったら?」
「……思ったんスけど桃っち、オレ達泊まってく事になってないスか?」
……そういえば、録画を観に来たのにお風呂に入るっておかしいよね?
なんで今まで気付かなかったんだろう。
さつきちゃんの胸に圧倒されてそれどころではなくなっていた。流石、兵器並みのおっぱい。
「学校は明日、早起きして行けばいいじゃない!」
やっぱり全て予定通りという感じの微笑みだった。