第67章 想い
さつきちゃんの家のお風呂も大きい。
ふたり並んで浴槽に入っても随分と余裕がある。
「……さつきちゃん、さっきの……いいな、って?」
さつきちゃんは、入浴剤を入れた乳白色のお湯を両手ですくいながらこちらを見た。
「私も、みわちゃんみたいに燃えるような恋愛がしたい!」
「もっ、燃え……!?」
まるで雑誌かドラマかに出て来そうなその表現。
私、そもそも燃えるような恋愛なんてしているのかどうかも分からないんだけど……!?
「お互いが好きで好きで、そうやって求め合って……そういう恋がしたいな」
「……さつきちゃんは、好きなひとがいるの?」
「私は、……テツ君が好き」
「そう……なんだ」
テツ君……黒子くん、のこと。
彼から告白され、ちゃんと返事をしていないという事実が胸を衝く。
私、最低だ。
「でも、分からなくなって来ちゃった……確かに、テツ君の事は好き。中学時代からずっと好きだった。
高校に入っても、それは変わらなかった。
でも……昔に戻っていくアイツを見てたら……」
「アイツって……青峰さん?」
さつきちゃんは小さく頷く。
「……大ちゃんを見ていたら、分からなくなって来ちゃった。大ちゃんに告白してくる女の子を見ると胸がムカムカして、それを大ちゃんが振るとホッとして。
私、本当は誰の事が好きなんだろう……」
今聞く限りだと、青峰さんにも惹かれているんだなというのが分かるけど……。
だって、そもそも高校だって青峰さんの事を放っておけなくて、桐皇に行ったんだよね?
「さつきちゃん、無理して決めつけようとしなくてもいいんじゃないかな。今は、自分のこころが思うままに正直になっていい時期なんだと思う」
「自分の……心?」
「今、一緒に居たいひとと居ればいいんだよ。どれが正解かなんて、直ぐに分からなくてもいいんじゃないかな」
私だって悩んでばかりで、偉そうに言える立場では全くないんだけどね……。
「そっか……うん、焦ったって仕方ないよね。ありがと、みわちゃん」
頬を染めたさつきちゃんは、いつもよりももっともっと可愛かった。