第67章 想い
さつきちゃんは私をリビングに通してくれた。
「みわちゃん、ウチに来た時に制服びしょぬれになっちゃったでしょ。ハンガーにかけておく?」
「あ、ごめんね助かる」
ハンガーをいくつか借りて、濡れてしまった制服を干させて貰う。
「海常のジャージって可愛いよね」
「そうかな」
「うん、きーちゃんにもみわちゃんにもよく似合ってるよ」
青い海のような色のジャージ。
いつも着ているジャージだけど、そんな風に言われると恥ずかしいな。
でも、私もこのジャージは好きだから嬉しい。
「ありがとう」
「お風呂沸くまでもう少しかかるから、お茶でも飲もうか」
そう言うとさつきちゃんは冷蔵庫から麦茶のポットを取り出して、注いでくれた。
「きーちゃんって、好きな子には独占欲爆発ってカンジだね」
「え、そう?
涼太って束縛嫌いだって雑誌のインタビューで言ってなかったっけ」
「うん、だからみわちゃんだけなんじゃないの」
「そうかな? 考えた事なかったな」
「……みわちゃんも、意外に結構ドンカンなんだね……」
「?」
「なんでもない……」
(これは……きーちゃんも苦労しそう)
「それにしても、誠凛の木吉さんがあんな凄い所でリハビリしているなんて知らなかった」
アメリカの病院での伝手なんだろうか。
どんな所なんだろう。
今からワクワクしてしまう。
「みわちゃんは、卒業後どうするか決めているの?」
どきりとする質問だ。
「ん……実はまだ、決めてなくて」
「迷ってる感じなんだ」
「うん……」
迷っている……というか、全くの真っ白というか……結局何も進歩出来ていない。
私はあれしたい、こうしたいというのがまだ、自分自身で確認出来ていないんだ……。
「さつきちゃんは? どうするの?」
「私もまだ決まってないんだあ。
……心配なヤツもいるしなあ」
それは……青峰さんの事だろうか。
ふたりは幼馴染み。
小さい頃から、ずっとお互いを知ってるんだ。
「あ、お風呂沸いた。みわちゃん、いこ!」
私は反論する暇もなく、脱衣所へ連行されていった。