第67章 想い
「火神君、ボクたちもそろそろ帰りましょうか」
「ほーか? まだ腹8分目なんふぁけふぉ」
モグモグとひたすら食べまくる火神さん。
黒子くんはそんな彼を見るのはすっかり慣れっこみたい。
……以前マジバで火神さんを見かけた時、彼のトレーの上に乗ったハンバーガーのあまりの個数の多さに、驚いたなあ……
「じゃあ残念だけど、時間も時間だし解散しよっか」
さつきちゃんの一言で、皆が席を立ち出す。
「みわちゃん、今日の練習試合のビデオって撮った?」
「うん、他のマネージャーの子に撮って貰ったよ。今日帰ったら観ようかなって思ってる」
「うちに来ない? うちでも録画したのがあるから、一緒に観ようよ!」
「へ?」
「うち、すぐそこだから。おいでよ!」
もしや、この流れは予定されていたものだろうか?
という位に自然にお誘いをされている気がする。
「みわ、桃っちのウチに行くんスか?」
「きーちゃんも来れば? そしたら、大ちゃんも寄っていけばいいし」
聞いているだけで更にカオスな状況になっている。
「さつきちゃん、でも突然悪いよ」
「大丈夫だよ、今日両親とも遅いって聞いてるから!」
そう言った彼女の瞳は爛々と輝いている。
……計画的だね、さつきちゃん。
反論できない男ふたりと私は、こうしてさつきちゃんのおうちにお邪魔する事になったわけである。
「あーあ、テツ君も来れれば良かったのに!」
黒子くんは少し被せ気味に「いえ、ボクたちは帰ります」と言ってそそくさと逃げるように帰ってしまった。
さすがと言うべき速さだった。
さつきちゃんのおうちは、築年数がそんなに経っていないであろう綺麗な一戸建て。
建て直したばかりだろうか?
カギを開けて玄関に入ると、家中が暗い。
「じゃあみわちゃん、私たちは先にお風呂に入っちゃおうか!」
「私……たち?」
「時間もないし、一緒にはいろ!」
「え、えええ!」
つい彼女の胸元に目が行ってしまう。
ただでさえコンプレックスな自分の胸が、もっと嫌いになってしまいそうな大きさだ。
「んじゃさつき、オレらは部屋行ってんぞ」
「うん!」
青峰さんは涼太を連れて、2階へ上がって行ってしまった。
絶体絶命……。