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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い


そんな事をぐるぐるぐるぐると考えていると、くらくらしてきた。

席を移動したりして盛り上がっている皆を横目に、ひっそりと立ち上がってトイレに向かう。



用を足して鏡の前に立った私は、酷い顔をしていた。

慢性的な寝不足が原因で目の下にはうっすらと黒いクマが常駐している。
更に、先程までの話を聞いていたからか、顔色は普段よりも仄白い。
喝を入れるようにばしゃりと冷水を顔に浴びせた。



気を取り直して戻ろうと思ったら、トイレと店内を繋ぐ細い廊下に、見慣れた水色の髪。

「みわさん、大丈夫ですか?」

「黒子くん、どうしたの?」

「いえ……様子が……元気が、ないなと思いまして」

流石、人間観察が得意というだけあってよく見ている。
私は黒子くんの隣のさつきちゃんに隠れて、死角になっていると思っていたのに。

「何かありましたか?」

「ううん、なんでもないよ。ありがとう」

こんなの、自分でもくだらないと言うのは分かっている。
あるかもわからない未来に怯えているだけだ。

「気にする事はないと思いますよ、噂なんて」

「うん……そうだね」

「もしそれで悩むような事があれば、ボクはいつでもみわさんの味方になりますから、頼ってください」

本当に優しいひと。
私は、貴方からの告白に返事もせず曖昧なままなのに。

「ありがとう……ごめんなさい、返事もちゃんと返せていないのに」

黒子くんは目を伏せて優しく首を横に振った。

「いえ、返事はいつでもいいと言ったのはボクです。
返事がどのような形であっても、困った事があったら頼ってくださいね。ボクは協力を惜しみません」

この言葉にどれだけ救われるか。

「黄瀬君は鈍感ですからね」

「ふふ、ありがとう」

ごめんね、黒子くん。
本当に、ありがとう。



「あっ、みわ」

シルエットだけでも誰か分かる。
涼太が焦った顔で駆け込んできた。

「涼太、どうしたの? お腹痛いの?」

「いや、みわが黒子っちと一緒にいなくなったから、どうしたかと思って……」

いつも余裕な彼らしからぬ慌てよう。
そして、隣で話していたはずの黒子くんの姿は既になかった。

「別にどうもしないよ、トイレに来ただけ。戻ろう?」

大切なものがより大切になればなるほど、怖くなるなんてどうかしてる。



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