第67章 想い
タンクトップを脱いだ青峰っちの肉体は、見事というしかなかった。
少し身長の伸びたオレとそう変わらないタッパなのに、その体躯には明らかな違いがある。
……もっと、鍛えなきゃダメっスね。
「あれ、階段から落ちたんだって?」
隣のシャワーブースでシャワーを浴びている青峰っちが横目で話しかけてくる。
あれ、とはみわの左手の事か。
「よく知ってるっスね」
「さつきがどっかから聞いてきた」
道理で、あの姿を見ても桃っちが聞かないはずだ。
他校のマネージャーの情報まで仕入れているなんて、恐れ入る。
それだけ彼女も注目されてるんだろうけど。
「ん、あれはちょっと事故で」
「……神崎のこと、オマエが孕ませたってマジ?」
「は、ハァ!?」
思わずシャワーブースに響き渡る大声を出してしまった。
なんだそりゃ。
「オマエが同級生孕ませて、それで諍いが起こって怪我人が出たってウチの学校のファンの間じゃウワサになってんぞ」
「ちょ、なんスかそれ!?」
「だからてっきり相手は神崎かと思ったんだけど、ちげーのか」
「悪いけど、今のウワサの中で何ひとつ事実ないっスからね?!」
ウチの学校だけでなく、他校にまでそんなウワサが広がってるなんて。
おまけに、伝言ゲームにしては酷い出来だ。
大体、キオサンが妊娠してたかもしれないって話は誰も知らない筈だけど……。
「なんでそんな事になってんスか……」
「オメーの日頃の行いが悪いからだろ」
こんなに清く正しく生きているのに、なんて言われよう。
「女の子のおっぱいばっかり見てる青峰っちに言われたくねぇっスわ!」
「巨乳の価値がわかんねーヤツだな」
「おっぱいは大きさじゃなくて感度っスよ!」
「要は巨乳で感度よきゃ問題ねーんだろ」
「そうじゃなくて! こう、手に吸い付くようなサイズとか肌の感じがサイコウなんスよ!」
「お、やんのか?」
「望むところっスよ……」
そのおバカな会話が、シャワー室の前で待つマネージャーふたりの耳に届いているとは知る由もない。
「大ちゃんのバカ……」
「涼太のバカ……」