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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い


「みわちゃん!」

監督に挨拶を済ませ、体育館内を見渡すとさつきちゃんがこちらに気付いた。

「さつきちゃん! 急いだんだけれど、間に合わなかったよ……」

「遠いもんねー、雨降ってるし。でも無事に着いてよかったよ。お疲れさま」



「オイ黄瀬、1 on 1しよーぜ」

「いいっスね!」

涼太と青峰さんはそう言ってふたりで1 on 1を始めた。

それを、さつきちゃんが嬉しそうに見つめている。

中学時代の彼等を知っているからこそ、嬉しいんだろう。

他の選手達も、着替えにも行かずにふたりのプレイに目を奪われている。

キセキの世代。
類稀なる才能を持った彼等の動きは、やはり他の選手とは頭ひとつ抜きんでている。

インターハイも、ウインターカップも、キセキの世代を擁するいずれかの学校が頂上を獲るだろう。



最近では、彼等はバスケでの活躍だけでなく優れたビジュアルのせいもあり、メディアを騒がせる存在になっている。

バスケットボールという競技は、学校の部活動としては盛んであるのに、プロの試合などは他の競技に比べて露出が少ない。

今では彼等をきっかけにバスケットボールという競技自体に興味を持つひとが増えているほどだ。

日本のバスケットボール界を変えていってしまうかもしれない。
そんなひとたちなんだ。


「大ちゃん! きーちゃん! もうご飯行くよ! そろそろ終わりにして!」

さつきちゃんがそう声を掛けても、暫くふたりの熱が治まることはなかった。

まるで子どものように無邪気にバスケを楽しんでいる涼太と青峰さんが、とても眩しく見えた。





「もー、皆来てるって! 早くシャワー浴びて来て!」

渋々とシャワー室に向かったふたりの背中を、苦笑いしながら見送る。

「全く、ふたりともデカイ図体して子どもなんだから!」

まるでお母さんだ。
皆のこの雰囲気が大好き、だけど正直……入って行く事ができないな、と壁を感じてしまう。

羨んでも、それは過去の想い出。彼等が描いた軌跡。

私が入っていける隙間なんてないのは、分かっているけれど。



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