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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い


既に乗ろうとした電車は発車してしまっている。
遠目で電光掲示板を確認すると、次の電車は15分後だ。


ありがたく借りたお金でチャージを済ませ、改札を通る。

さりあさんは同じ方向の電車に乗るらしく、ホームでも姿を見つけた。

「あ、あの。本当にありがとうございます。明日夜、返しにいきます」

「そんなに気を遣わなくていいんだけど。明日夕方まで撮影だから、来るなら時間分かったら連絡くれる?」

そう言ってさりあさんはオシャレなデザインの名刺を取り出した。

「頂戴いたします」

「ぷ、もっとくだけた感じにしてよ。ホントに高校生らしくないなあ」

「す、すみません……」

「どこ行くの?」

「あ、東京の学校まで、練習試合で……」

「へえ、大変だね。夜は雨が強くなるみたいだから気を付けて」

「ありがとうございます」

ペコリとお辞儀をして、その場を去る。

一緒にお話しながら電車に乗る……という関係でもないし、乗り換え駅で階段に近い所に乗っておきたい。

さっき学校から出る時に監督と主将には連絡をしたから、特に今しなければならない事、ないよね。

ホームに入ってきた電車は思ったよりも空いていて、座る事ができた。

今できる事を少しでも進めてしまおうと鞄を覗くと、スマートフォンが目に入る。



「みわは、必要最低限しか連絡くれないっスよね……」



寂しそうに呟いていた彼を思い出す。

確かにそうだ。

普段から、余分な連絡はしないタイプ。
だって、何を送ればいいのかよくわからないし、送られても困るんじゃ?

不用意にメッセージを送って面倒がられるくらいなら、送らない方がマシと思ってそうしてきたんだけど……。

あんなに、残念そうな顔されちゃうと。

スマートフォンを取り出して、メッセージアプリを起動した。

どういうテンションで何を送ればいいのか分からない。

けど、とりあえず今思っている事を簡潔に送ってみようかな。

時間的には、桐皇に着いて着替えたりアップしたりしている頃だろうか?

まあ、見れないなら見れないで、構わない内容だし……

不器用に指を動かし、涼太の何倍もの時間をかけて短いメッセージを送った。



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