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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第67章 想い



「遅くなっちゃった……!」

やっぱり今日も雨。今日はなんだかついてない。
……制服にコーヒー牛乳をこぼしたのは自分のせいだけど。

合宿所は、無事にIH前の期間で確保する事が出来た。

皆は先に桐皇学園に向かっている。
私もこれから急いで向かわないと!

ばしゃばしゃと水しぶきを上げながら駅へ走る。
きっと、涼太に言わせれば「なんか転びそう」な走り方だろう。

でも、なりふり構っていられない!

改札前から、電光掲示板が見える。
次の電車はわずか1分後の発車だ。

でも、今急いで走れば間に合うはず!
ピッ! キンコーン! バーン!

派手な音を立てて、警告音が鳴った自動改札機に止められた。小さなモニターを見ると

『チャージ残高不足』

し、しまった……!
最近電車でお出かけすることが殆どなかったから……!

急いで券売機に走り、ICカードを挿入してお金を……

あれ?

お財布が、ない?

「ええええっ!?」

お財布、思えば今日は一度も使ってない……コーヒー牛乳も、ペンケースに入ってた小銭を使っただけだ。

家?
教室?
部室?

どこにしろ、戻って探す時間なんてないのに……!

どうしよう。とてもじゃないけどタクシーなんて使う余裕はない。
そもそもお財布がないんだもの。

一度学校の最寄り駅まで走って移動して定期で家に戻って、もし家になければおばあちゃんに借りるしか……もう、それが一番早い!

「……みわちゃん?」

よく響く、ソプラノの美しい声。
この声は。

「さりあさん」

「どうしたの、この世の終わりみたいな顔して」

「……ICカードをチャージしようとしたら、お財布が……なくて……」

レジでお金が足りなくて商品を返す子どもの気持ちだ。
うう、みじめ。

「急いでるなら貸すわよ、ほら」

さりあさんはそう言って1万円札を出した。

「い、いえ、そんなお金を借りるなんて事、いけません!」

「ぶ、何それどこの時代よ。急いでるんでしょ、返すのはいつでもいいから。見ず知らずってわけじゃないからいいじゃない、ほら」

お金の貸し借りは身を滅ぼすって、おばあちゃんが言ってた……!
で、でも……背に腹は代えられない。

「……すみません、お借りしてもいいですか……。明日、すぐに返しに行きます!」



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