第66章 和
「ま、状況が改善されてるなら、それはみわの人徳じゃないっスか」
「人徳って……ないよ、そんなの……」
半ば呆れたように笑って、みわはそう言った。
相変わらずこの子の自己評価の低さには恐れ入る。
ふわふわの肉体の中には、堅い意志。
でも、その中に不安定さもあって。
全く、目が離せない。
ふわふわの……
「みわってマジでキモチイイ」
腕の中の細い身体をもう一度抱きしめる。
あんなに好きではなかった女性とのセックスだったのに、みわとするのはもうやめられない。
この子に包み込まれる安心感とこの子を抱いているという快感を脳が覚えてしまっている。
そう言うと、みわの身体がぴくんと反応した。
「……身体、だけ?」
不安そうに見上げる大きな瞳。
ぷにぷにのほっぺたを左右にびよんと引っ張った。
「あたたた」
「何言ってんの、こころがあるからキモチイイんでしょ」
「いひゃい」
「みわだって、分かってんでしょ」
面白い輪郭になっている顔をポッと赤らめて、小さくこくんと頷いた。
「ごめんね、今回のキオサンの件もスズサンの件も、オレが軽率だった。
オレは、誰にでも優しくしたいわけじゃない。みわだけ大事にできればいいんス」
艶のある髪に指を通して、細い腰に腕を回して抱きしめた。
この子だけ、居ればいい。
黒子っち、いくら黒子っちでも、はいそうですかとみわは渡せないっスよ。
オレ、この子とずっと一緒に居るって決めたから。
「だから、みわ」
胸に規則的にぶつかる吐息を感じる。
腕の中に包み込んだ彼女は、安らかな表情で眠りについていた。
「……寝ちゃったんスね」
香る髪の匂いはいつもの彼女のもの。
嗅いでいるだけで安心する。
今は、この体温を感じているだけで幸せだ。
「おやすみ、みわ。良い夢を……」
みわが安らかに、穏やかに眠れるよう、寄り添っていた。
モノなんてなくたって、お互いの気持ちを繋げて、抱き合って。
今日は最高の誕生日。