第66章 和
6月も下旬になり、続く長雨にうんざりしている中、朗報が舞い込んできた。
「桐皇学園と練習試合ですか?!」
IH前の貴重な調整。
更に、敵情視察……というかこちらも手の内を明かす事にはなるのだが、そうしてでも相手の情報が欲しいと、監督は今年のチームにはそれなりに自信があるようで。
「それでな、神崎。お前その日は……」
「あ……」
そうだった。
練習試合と聞いたその日は、生徒会との集まりで、夏合宿の合宿所使用についての会議が行われる日だ。
海常高校は運動部が盛んで、学校が保有する合宿所もひとつではないけれど、夏に大会がある競技に関しては、使用日程というのは結果に大きく左右されるのだ。
「この会議にお前以外のマネージャーが出るのは得策ではないだろう。それが終わったら後から来なさい」
「……承知いたしました」
仕方ない。これも重要な役割だ。
IH本戦前に必ず1回、合宿所の確保をしておかないと大きな影響が出る。
この会議は、毎年かなり荒れ、ヘタすると怒号まで飛び交う騒ぎになる。
桐皇とのデータは最初から最後まで欲しいけれど、仕方ない。
キオちゃんとスズさんに、記録と録画をお願いしておこう。
『もしもし、みわちゃん? 来週ウチに来るんだよね!』
電話の向こう側では、嬉しそうに笑う桃井さつきちゃんの声。
「そうなの。急なんだけどね。でもね、私は学校での会議が終わってからなんだあ」
『そうなんだ! 終わったら皆でご飯食べに行こうよ!』
「うん、涼太にも言っておくね」
『みわちゃん、あの後、どう?』
「……ごめんね、相談しておいてちゃんと報告もしないで。
解決したか、って言われたらしてないんだけど……少し、涼太に甘えて保留って言うか……なんて言ったらいいんだろ……」
『……ううん、ふたりの間で話が出来たならいいの。来週、楽しみにしてるね』
「さつきちゃん……ありがとう」
皆の優しさに助けられている。
私も優しい人になりたい。