• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第66章 和


乱れた吐息の合間に、遠雷が聞こえる。

誰よりも太陽が似合う涼太が梅雨の時期に生まれたというのが、なんだか不思議。

……でも、涼太はよく底抜けに明るいような、ちょっとお調子者なイメージがあると言われるけれど、決してそんな事はない……と思う。

実は思慮深い、優しく繊細な彼。

彼の心の奥底は分からないけど、そんな中見せてくれる明るさが、皆を照らすんだ。




「……コレ、いつ買ったんスか?」

涼太は、さっきから私が買った避妊具の箱を眺めている。

「…………買ったのは、かなり、前。
涼太と……こういう事、するようになって暫くしてから」

「へぇ……」

やはり、ダメだっただろうか。
こういうのは男性のプライドを傷つけてしまうもの?

でも、あの状態で我慢するのなんてもう無理だったから……。

「余計な事して、ごめんね」

やる気マンマンで準備していたみたいで、恥ずかしい。
逃げるように布団に潜り込んだ。

「余計な事なんかじゃないっスよ、ちょっと驚いたけど……嬉しかった」

布団の中まで追いかけてきた涼太に捕まり、ぎゅっと抱きすくめられる。

なんだかくすぐったくて、でももう力の入らない身体ではどうすることもできなくて。

「みわ」

私を呼ぶ声が、髪を撫でる指が優しくて、安心する。

……今まで、ひとのぬくもりで安心したことなどあっただろうか。

抜け落ちてばかりの私の記憶の中には、ない。

優しく抱きしめて貰った事も、大丈夫だよと慰めて貰った事もない。

好きだと言われた事も、愛してると抱かれた事もない。

全部、全部涼太から貰った。



それなのに、私は彼のために何か出来ているんだろうか。

大体、自分の優柔不断さには嫌気がさす。

彼のために彼と別れようと思っていたのに、別れられなくて、離れられなくて、結局こんなズルズルと続けて。



本当に別れなければならない時に、この手を離す事が出来るんだろうか?


/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp