第66章 和
涼太が妖しい微笑みで言った言葉の意味が分からない。
「何を……言ってるの?」
それって……自慰行為を見せろっていう事?
「大丈夫、写真撮ったりしないから」
「そ、そんなの当たり前ですっ!」
「じゃー……見せて」
そう言って涼太は肘をつけて横になり、手の甲で頭を支えて完全に傍観体勢。
「ま、待ってよ、そんなのムリ」
かつて、彼が寝てる間に隣でしようとしたのに気付かれたというだけで、死にそうな程恥ずかしかったのに。
「お祝い、してくんないんスか……?」
そう言って上目遣いをしてくるその姿は、いつも私を求めてくるオスの表情とは全く異なる。
ほ、本当に…………いつも思ってるけど、涼太はズルいのだ。
どう言えば私が断れないかを、知っている。
今年はロクに誕生日プレゼントも用意出来なかった。
だから、彼が望む事くらいしてあげたい。
で、でも、でも!
……涼太はいつも、私が驚くような事を平気で言う。
ずっと悩んでいたお母さんの言葉、オレが直接言うから忘れろって、何その無理矢理なの。
でも、こころがすっとラクになった気がする。
ずっと自分の中だけで消化出来ずに苦しんでいたものが、流れていったような。
このひとだけは、もしかしたら違うのかもしれない、なんて少しの希望を抱きたくなるような。
……そんな彼が望む事、私が出来る事なら……
「……ど、どうしたら、いいの?」
琥珀色の瞳が更に妖しく光ったような気がした。
「足、広げて座って」
早速泣きそうになるような事を言われ、逃げたくなるけれど、自分でやると決めたからには、やるんだ。
心臓が飛び出しそうになりながら、体育座りをして足を左右に広げた。
彼の視線が、ソコに集まっている。
「や、や、お願い、そんなに見ないで」
「ダイジョーブ、いつも見てるから」
「よ、余計に悪いよっ!!」
ああ、もう既に心臓は飛び出してどこかに行ってしまったかもしれない。
涼太に見られていると思うと、熱くなってくる。
ジワジワと、焼かれているように熱くなる。