第66章 和
ぷにぷに。
その感触を楽しむように、ひたすら指で耳朶を弄る。
「ちょ、涼太……っ」
「ねえ、分かった?」
「分かった、分かったから……!!」
とりあえず無理矢理でも了承を貰えたから、耳朶をイジメていた指は解放し、今度は髪を弄る事にした。
今日は、みわとそーゆーコトをするつもりはない。
みわと触れ合っていたらオレのお豆腐理性はカンタンに崩壊する事は分かりきっていたから、ゴムも持って来てない。
準備万端にすると、ついついまた調子に乗ってヤッてしまいそうだから。
腕の中で、彼女の存在を確かめているだけで満足だ。
「今日は、みわとこうしてたい。
ワガママ言ってもいいでしょ……今日オレ、誕生日だし」
「……うん」
するすると、みわの細い腕が背中に回されてくる。
みわも、オレの体温を味わうように胸に顔を擦り寄せてきた。
静まり返った室内。窓の外から、水音が聞こえる。
雨が降り出してしまったらしい。
「……雨、降ってきたっスね」
「そうだね……」
秒針の音を辿って時計を見つけると、まだ20時にもなっていない。思っていたよりもずっと早い時間だ。
そうか、今日は17時前には練習が終わったんだったな。
ふたりきりになりたいというリクエストをしたものの、具体的にどうしようなんて考えてもいなかった。
こうしてくっついているだけでいい。
そのまま微睡んで、眠ってしまえたら最高だ。
「みわ、寝よっか」
「う、うん」
みわにも手伝って貰いながら布団を敷き、寝る支度を済ませて布団に入る。
……すっかり泊まって行く事になっちゃってるけど……。
みわのいい匂いに包まれながら、目を閉じていた。
「………………た?」
うっかりウトウトしていて、みわがなんて言ったのかを聞き取る事が出来なかった。
ごめんごめんと目を開けようにも、瞼が重くてなかなか開かない。
「寝ちゃったの……?」
あー、起きてるっスよ……
そう言おうとした口に、一瞬柔らかいものが触れた。
「涼太……ありがとう、ダイスキ……」
とくんと胸が高鳴って、動きが鈍くなった手が彼女の頭を支える。
「……え?」
開かない瞼をなんとか開こうとしながら、みわの唇を引き寄せた。