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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第66章 和


オレの声色が変わったのを察知して、腕の中にいるみわの肩が強張るのが分かる。

「涼太、怒ってる……?」

胸に顔をうずめたまま、顔を上げようとはしない。
ビビらせるつもりはないんスけど……。

でも、怒っているのを隠すつもりもない。

「怒ってるっスよ。みわがあまりにもわかんねーこと言うから」

「わかんねーことって……」

「ねえ、みわにとって幸せって何? 今、こうしてるのは幸せじゃないんスか?
ふたりでメシ食うのも、街歩くのも、お喋りすんのも、コタツに入ってミカン食うのも、幸せじゃないんスか?」

「えっ、えっ」

「手を繋ぐのも、キスするのも、セックスするのも幸せじゃないんスか? 
ねえ教えてよ、別れたらオレにどんな幸せがあるの?」

みわを包んでいる腕に力を入れると、その細い腰がグッと引き寄せられて、オレ達の距離をゼロにする。

「そ、それは……」

「オレがどっかの女とくっつけば幸せになれるって? 冗談じゃねーよ。
そんな無責任な事言ってねーで、オレの事幸せにしてくれよ、みわ」

「え……」

「オレの近くにいて、いつでもオレを幸せな男にしてよ……」

その柔らかい髪に顔をうずめると、ふわりとシャンプーの香りがした。
いつもは就寝前に風呂に入るみわが、今日はオレが来る前に済ませていたらしい。

いい匂い。
嗅いでいるだけで気持ちが落ち着く。

「涼太、ごめんなさい。怒ってる……?」

「もう、怒ってねぇっスよ……」

みわを腕の中に抱いて、怒っていられるわけがない。

「変な事言い出さないでよ……今日までオレがどんな気持ちでいたと思うんスか……」

みわが突然思い詰めたような顔をして、距離を置きたいと言いだして……。
バスケに影響させなかったオレを褒めてほしいくらいだ。

「……でも」

「"でも"はもういいっス。お母さんに言われた事が心の中にあるってのも分かった。
それはもう、直接確認するしかないから、今はもう忘れて」

「へ……?」

「オレが直接、みわのお母さんに聞きに行くから。だからそれまで、その話は忘れておいて」

呪いを解けるのは、かけた本人だけって言うじゃないスか。

「そ、そんな……ぁ」

柔らかい耳朶に再び触れると、今度は甘い声が返ってきた。

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