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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第66章 和


「みわ、おいで」

「え……」

両手を広げて彼女を呼ぶと、涙で濡らした瞳を揺らし少しだけ逡巡を見せてから、オレの胸の中に入ってきた。

あったかい。

こんなに近くにいるのに、なんですれ違っているんだろう。

「もう一度聞くっスよ。オレと距離を置いたら、この状況は改善されるの?」

「……分からない、けど……このまま涼太を騙しながら付き合っていくのは……もう……辛い……」

「ね、何度でも言うっスけど、オレは騙されてなんかいないからね?」

「……涼太が、他の女の人と一緒に居るのを見て、自分を無理矢理納得させようとするのも……
気持ちが乱れるのも……もうやだ……」

キオサンとの時も、オレには追及せずに平常心を装っていたみわを思い出す。

あんな事、二度とさせたくないのに。


「そんなの、納得しないでよ……ひっぱたいてよ、オレの事」

「そんな事出来ないよ、涼太にはもっと相応しい人がいるんだから」

「オレにはみわしかいないってば」

盲目になっているつもりもない。
オオゲサに言っているわけでもない。

こころが求めているのが、みわなんだ。

「だから、それは……」


「お母さんとオレ、どっちを信用する?」

……意地悪な質問か、これは。

母親については、信用してるとかしていないとかそういう問題じゃないんだろう。

もう、彼女の頭の中に染み付いているというだけだ。

「……」

「ごめん、今のは意地が悪かったっスね」






「……涼太の幸せを考えたら、別れるのが一番なの」






ぽつりと、そう小さく呟いただけの言葉。

それなのに、オレの脳みそは沸騰しそうな程熱くなった。

「……なんスか、それ」

「私は、涼太に幸せになって欲しい。私みたいな女に関わってないで」

「ってことはさ……オレの為を思って、距離を置こうって言ったってこと?」

「……それも、ある」

「勘違いしないでよ、みわ。
別れるのがオレの幸せだって? そんなワケないだろ」


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