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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第66章 和


そりゃ、最初は同情だったかもしれない。
震えながら頑張る彼女を見て、オレがなんとか守ってやりたいと、そう感じたのも否定できない。

でも、そんなのはきっかけに過ぎない。

みわは、その後ふたりで重ねた時間も全て否定するのか。
ふたりで交わした言葉も、熱も。

そんなモンだったのか。
……こんな屈辱的な事はない。


「私も……涼太がちゃんと、私の事を見て好きになってくれたなら……もしそれが本当なら、なんて幸せな事だろうと思ってた。
でも、そんなのは幻想。私は、絶対に幸せにはなっちゃいけないんだって」

どうしたら、分かって貰えるんだ。

いや違う、こんな風になったのは、その母親の言葉とやらを思い出してからだ。

それまでは、オレとの積み重ねた時間を、みわも大切にしてくれていた。

オレの気持ちだって、疑った事もあるかもしれないけど、でも信じてくれていた。

それを、根こそぎ塗り替えられた。
こんな呪いみたいな言葉、どうしたらいいんだよ。

「そもそも、なんでお母さんはそんな事をみわに言ったんスか……」

「分からない、けど……お母さんが言う事に間違いはなかったの、今まで」


本当にそうだろうか。

"あの花"を娘に贈り続ける母親が?

自分の娘に"幸せになっちゃいけない"なんて言う母親が?

間違っている、それはハッキリ分かる。



以前お祖母さんから聞いたみわの過去の話は、そこまで深い部分には触れていなかった。

みわは母親に愛されずに育ったと、そこはハッキリと聞いたけれど。

もう、いっそのこと全部知りたい。

みわの過去を、彼女の記憶がなくなっている部分も全て知りたい。



……ふたりきりになれてラッキーだなんて思っていたくせに、こうなるとお祖母さんに早く帰って来て欲しいと思ってしまう。



「みわはオレの事、信じられない?」

「そんな事ない……信じ、たい……のに……涼太に、申し訳ない気持ちでいっぱいになるの……」

重なった手を、ポタポタと落ちる温かい雫が濡らしていく。

冷たい手と温かい涙、どちらが本当の彼女の気持ちなんだろう。



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