第66章 和

「だから……涼太が私の事を好きだって思っちゃうのも、それのせいなんだよ」

話は思わぬ方向へ向かい出した。

オレがみわの事を好きなのは、つまりなんだ、洗脳されているとでも言いたいのか。

「みわ、それは」

「自分じゃ分からないものなんだって。気づいたら、惹かれてるんだって」

そりゃ、オレだって気づいたら惹かれてた。
でもそれはそんな魔性だオオサンショウウオだというものではなくて、みわに恋をしたからだ。

「みわ、オレはみわの事が好きなんスよ」

「……ありがとう」

それはあまりにも他人行儀な返答。
オレが、女の子たちをテキトーにあしらう時のような。

「ねえ、みわはオレの事、どう思ってるんスか？」

また、沈黙が下りる。
聞かなくたって、分かり切っていることだ。

「ねえ」

「すき……だよ」

知ってるっスよ。
そんなの、毎日アンタ見てれば火を見るより明らかだよ。

「みわは、オレがみわと距離を置けば、目が覚めるとでも思ってんの？」

みわは更に驚いた様子で、一層そのつぶらな瞳を大きく見開いた。

「……なんで分かんの、って感じの顔っスけど……」

「……涼太が、最近キオちゃんやスズさんと一緒に居たりするのは……
きっと、本能的な部分では他の女性を求めているんだって、そう思って」

やはり、頭が良い子の思考というのはオレからしたらあまりに突飛で、それがみわほどの頭脳ともなれば、分かり合えるレベルではないのかもしれない。

でも、みわが言っている事が100パーセント全くの間違いだという事は、バカなオレでもよく分かる。

「そのふたりの事は、言ったでしょ」

「聞いたよ、聞いたけど……でも私、分からなくなってしまった。
今まで、私が一番涼太の事分かってるかも、私が一番涼太の事を好きなんだって思ってたの」

そう思ってくれていたなんて、初めて聞いた。
最高に嬉しい。

「でもね、そんなの私の思い上がりだったんだよ。
涼太は、多分最初は私に……同情して興味を持ってくれて、その後は……」

「その後は、自動的に好きになったとでも言いたいんスか？」

心外だ。