第66章 和
みわが持って来たケーキは、フルーツが沢山乗ったものだった。
「おお、手作りっスか?」
「今年はこんなケーキにしてみました……」
そう言って笑ったみわが可愛くて可愛くて。
オレはこれからも毎年作って欲しいんスけど?
みわといる未来しか想像してない。
「ん~、この甘さが絶妙っスね」
みわの作ってくれるケーキは、クリームがスッキリとした甘さで、いくらでも食べれそうだ。
更に、フルーツの酸味がまた食欲を増す。
さっきあれだけ食べたのに。
……みわ自身は、どろどろに蕩けそうな程甘いんスけどね。それでも、いくら食べても飽きないけど。
だめだ。今日は妄想厳禁。
気付けば、小さいサイズとは言えホール半分位の量を胃に収めてしまった。
「んー、満腹」
「コーヒーのおかわり、飲む?」
「いや、もう大丈夫っス」
「うん」
またふと沈黙が訪れて、みわがコーヒーを飲む音だけが聞こえる。
気まずい沈黙じゃない。一緒に生活していたら、当たり前に訪れる会話の谷間。
「……みわ、この間話した時から随分時間が経っちゃったけど」
みわから積極的に話を振ってくるまで待つのが良いのかもしれないけれど、やっぱりオレとしては1秒でも早く今まで通りの空気に戻りたい。
ちゃんと、みわと話す機会が欲しかった。
「涼太、私の部屋に……行こう?」
さっきから、そこにこだわるんスね?
別に、お祖母さんもいないしいいと思うんスけど……。
まあ、オレに断る理由もないか。
「いいっスよ」
ギシギシと軋む、角度が急な階段を上ってみわの部屋へお邪魔する。
部屋の中は、この時期独特の湿気に覆われていた。
「……ごめんね、なんか広い部屋でこういう話をするの、好きじゃなくて」
「そうなんスね、別にオレはどこでも構わないっスよ」
みわが出してくれた座布団に座り、みわの様子を観察する。
すっかり、気持ちは落ち着いている……ように見える。
話して大丈夫なのだろうか。
「みわ、まだ……オレと距離を置きたいと思ってる?」
いきなり核心を突く質問に、少し俯いていたみわが驚いてこちらを見た。