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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第66章 和


思えば、その手には何泊か出来そうな旅行鞄が。
どうやら非常に計画的だったようだ。

見るからに慌てふためくみわ。

「ええ!? 聞いてないよ!? 今日は涼太が来るって言ったじゃない!」

「だから安心して家を空けるんじゃないの。みわひとりじゃ心配だからねえ」

「ちょっと、おばあちゃん……!」

「あら、もう時間。行ってくるわね」

そう言ってお祖母さんは不自由な足ながらも、足取り軽く出て行ってしまった。

その背を追って玄関まで行くと、お祖母さんはオレを待っていたようだ。


「あの、スイマセンなんか」

毎度毎度、ここまでお膳立てされて申し訳なさしかない。

「……あの子が何かウジウジ悩んでいるみたいで、ごめんなさいね」

「いえ、多分オレのせいだと思うんで」

「……貴方のせいじゃないとは思うのよ……あの子のあれは母親のせいで」

「え?」

「もー、おばあちゃんってば!!」

台所からパタパタとみわが駆けてくる。

「お説教は帰ってから聞くわ。お土産買ってくるからね」

杖をつきながらお祖母さんはウキウキと出掛けて行ってしまった。



「……ウソ……」

みわはもう顔面蒼白と言った具合に驚いている。

なんか、可哀想になってきた。
おまけに、そんなに見るからにショックを受けられるのは、オレもショックなんスけど……。

思いがけずみわとふたりきりでラッキーなんて思ってしまったのに。

「みわ、そんなに警戒しなくても、今日は取って食ったりしないっスよ」

ショックを緩和するためにそう言ったんだけど、ふたりきりの時の前科ばかりで、全く信憑性がないのは自覚している。

「そ、そういうんじゃないもん」

そう言って慌ててUターンしたみわは、走り出した途端片方のスリッパが脱げて飛んでいき、転びそうになっていた。

動揺しているのがミエミエである。

そしてその可愛い姿を見て胸が躍っているのだから、オレの理性も大概、豆腐以下だ。



だから、今日は一緒に居られればそれでいいんだって……。



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