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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第66章 和


翌日、17時から業者が入るというので、16時半にはクールダウンが始まった。

マネージャー陣はその間に、全員で片付けに勤しむ。

……片付けという分野においては、今の私は本当に役に立たない。

衣類ひとつ上手く畳めないし、重い物は持てない。

仕方がないので、片付けは他のメンバーにお願いして、モップがけを始める事にした。



モップがけは、当たり前だけどずっと床を見ている必要はないし、かけている間にも結構自由がある。

片手で小走りになりながらモップをかけつつ、視線はクールダウン中の涼太に釘付けになってしまっていた。

タンクトップから覗く鎖骨は息を呑むほどにキレイで、露出された肩や首、汗に濡れた髪はもはや凶器の類だと思う。

見ているだけでこれだけドキドキさせられて、なんだか癪に障るというか。

体育館を取り巻くギャラリーの気持ちがイタイ程分かってしまうのだから、なんだか悲しい。

そういえば最近は、校内で嫌がらせをされる事が減ったな。
通りすがりに悪口を言われたりするのはもう慣れっこだけど。



「神崎先輩!」

スズさんの声がする。
彼女の声は、本当に華やかで可愛らしい声。

身長は低く、でもその低身長からは想像もできないほどの胸元の主張。

彼女に魅力を感じない男性なんているんだろうか。

「なあに?」

「神崎先輩、今日はもう上がる準備して下さい」

「へ? どうして?」

「今日は黄瀬先輩のお誕生日をお祝いするんですよね? たまには早めに上がって下さい。もう練習は終わってるんだし」

「え? え?」

突然こんな事を言うなんて、どうしたんだろう。
そうでなくても、最近のスズさんの態度には驚く事が多い。

「ほら、早く!」

辺りを見渡すと、他のマネージャー達もうんうんと頷いている。

ここまで背中を押されてしまっては、なんだか断り辛い。

申し訳ないけれど、先に上がらせて貰う事にした。




「スズさん、最近みわちゃんに対する態度、変わったね」

「キオ先輩」

「何か心境の変化でも?」

「……別に……ただ、わたしもあんな風に強くなりたいと、思っただけです」

「気付いて貰えて、良かったよ」





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