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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第66章 和


向かい合ってラーメンを啜るというのはやっぱりなんだか恥ずかしくて、テーブル席もあるお店だったけど敢えてカウンターに並んで座った。

「みわ、何にする?」

「んー、野菜ラーメン!」

「じゃあオレこの白玉とんこつにしよっと」

………………。

き、気まずい。
今まで、ふたりきりの時って何話してたんだっけ。

バスケの話。
学校の話。
あ、テストの話?
ああ、もう頭が真っ白。

「さ、最近赤点ギリギリっていう事がなくなったね、涼太」

って、うわわわ……けなしてどうするの!
落ち着いて。テンパるとロクな事がない。


「そうでしょ? オレも頑張ってるんスよ」

思いつきで最低レベルの話題振りをしたのにも関わらず、返って来た声はとても明るくて。
なんだか救われる気持ちだ。

「じゃあもう個人授業、いらないね」

…………

だめだ、私はもう今日、黙っておいた方がいいかもしれない。

「そんな事言わないでよ。引き続き、お願いするっスよ?」

「……ハイ」

辛うじて涼太の受け答えで成り立っているこの会話。

付き合いたての頃よりもずっとヒドイ。




そんな最低の流れを、出来立てラーメンが遮ってくれた。

涼太が割り箸を割って渡してくれる。

「あ、ありがとう」

「ん」

左手に力が入れられなくて上手く使えないから、こういうちょっとした事が不便なんだ。

どうしよう。嬉しい。
この人といると、本当に心臓がうるさくて、騒がしくて落ち着かない。

暫く無言でラーメンを啜る音だけがふたりを包む。

「笠松センパイがさ」

「え、うん、先輩が?」

「夏休み、オフの日にセンパイんとこの練習見に来いって言ってたんスわ」

「へえ? 大学に?」

「まだ進路決めてないならみわと見に来いよって……」

「あ、私も?」

3年生の先輩……いやもう3年生じゃないんだ。

笠松先輩の代の先輩方は、私と涼太をセットで考えているような節があるから……

「IH終わったら、行く?」

「……うん、行こうかな」



夏が来る。

……でもその前に……

明日の……


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