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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第66章 和


女子更衣室を出ると、向かい側の壁に寄りかかり、スマートフォンを見ている涼太が目に入った。

あれだけハードな練習をこなした後だというのに、なんてことない表情の彼はやはりタダモノではないと思う。

マネージャーの私ですら全身疲労でプルプルしているというのに……。


「おっ、お待たせ」

声を掛けると涼太は顔を上げ、優しい琥珀色の瞳で微笑んだ。

「お疲れ様、みわ」

その声が部活中のものとは違い優しくて、胸がとくんと跳ねた。

……スズさんが変な事を言うから、無駄に意識してしまう。



「メシでも食いに行かねっスか」

「えっ、あ、うん」

その会話があまりに今まで通りで、普通で戸惑う。
涼太はどういうつもりなんだろう……。

涼太が右側を歩き、私は左側を歩く。
いつも通り、ふたり並んで校門までの道を歩き出した。

「みわ的に、どうだったっスか? IH予選」

「ん~……欲を言うならもう少し得点力をつけたいかな」

「やっぱ、そうっスよね……」

「今のままじゃ、陽泉みたいにディフェンス主体のチームから得点を奪うのはなかなか難しいかも。誠凛とは相性良いとは思うけど……」

「紫原っちか……やっぱオレがもう少し切り込んで行かないとっスかね」

「それもあるけど、もう少し外も使った方がいいよ」

「スリーポイントか……緑間っちは前よりもっともっと強くなってんだろうなあ」

あ、良かった。
本当に、いつも通りだ。

「みわ、何か食べたいものある?」

「え? ラーメンとか?」

「ぷっ、ラーメンでいいんスか?」

「ええ、なんで笑うの? いいじゃないラーメン。
去年の夏に連れて行って貰ったお店の塩ラーメンだって……」

あ。
何か今、想い出話とかしちゃいけない関係な気がする。
何も問題がなかった頃の話とか、しちゃいけない気がする……。

「……美味しかったし」

「ん……そうっスね……」

突然広がる沈黙。
バカ。いい空気だったのに。

動揺を隠そうと大きく手を振ると、涼太の手とぶつかった。

「あっ、ごめんね」

咄嗟に避けようとした手を掴まれて、長い指が絡んできた。

突然の恋人繋ぎに、顔が熱くなるのが自分でも分かる。

気まずくしているのは私のせいなのに、大きな手に繋がれて安心しているなんて、最低だ。




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