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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第66章 和


はぁ……

女子更衣室内の自分のロッカーをパタンと閉め、思わずため息をついた。

去年の私の誕生日は……

結局色々な事件があって、ちゃんとお祝い出来なかったと言って、涼太が埋め合わせに素敵なレストランへ連れて行ってくれた。

その気持ちが嬉しかった。それだけで十分だった。

その後、深夜までベッドで…………

火が吹き出しそうになる顔をぶんぶんと振って、熱を逃がした。

どうしよう、誕生日もう明日なのに……

毎日を過ごすのに一所懸命になりすぎて、完全に失念していた。最悪だ。

慌てて今日何か買いに、と思っていたのに、涼太に一緒に帰ろうと誘われてしまって……。

あああああ、どうしよう……!!!

「明日、黄瀬先輩のお誕生日なんですよね、神崎先輩」

隣で着替えていたスズさんが楽しそうに話しかけてくる。

「お祝いは、何するんですか? 先輩」

「う……」

今まさにその事について悩んでいたわけであって。

「まさかまだ、準備してないんですか?!」

「…………」

ぐうの音も出ない。

「うわぁ……倦怠期のカップルじゃないんだから……」

最近は素直に指導を聞いてくれている彼女だったけど、流石にプライベートは今まで通り容赦ない。

「これから何か買いに行くんですか?」

「ううん……一緒に帰ろうって、誘われちゃって」

「絶体絶命じゃないですか」

「そうなの……」

「わたし、神崎先輩に遠慮してプレゼント用意しなかったのに。こんなんだったら、ちゃんと買えば良かったなあ」

スズさんはまだ涼太の事を諦めていないみたいだけど、物腰は随分と柔らかくなった。

「まあ、先輩。もうこうなったらカタチ無いもので勝負しかないですね」

「カタチの無いもの?」

「そうですよ。気持ちとカラダでお祝いを」

「ちょっ……スズさん!」

「そんなに照れる事ないじゃないですか。もうシてますよね? いいなぁ黄瀬先輩と……」

「も、妄想しないでってば!」

スズさんは私たちの今の状況を知らないから、そんな事が言えるんだ。

ラブラブのカップルじゃないんだから……!


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