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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第66章 和


……昨夜、みわからの連絡はなかった。
オレもなんと声をかけてあげればいいのかが分からず、連絡出来ずにいた。

ちゃんと眠れただろうか。

いや、普段から不眠症気味の彼女が、昨日のあの状態で眠れているわけがない。

監督は暫く部は休ませると言っていたけれど、大丈夫だろうか……





毎朝のロードワークを終え、その足で部室に入る。

汗をかいたシャツだけは新しいものにして、ひとりでできるストレッチをしてから体育館に向かった。

既に体育館からはボールの音がする。
中村センパイだろう。

いつも、ロードワークの途中に登校する姿を見かけているから。




「オハヨーゴザイマス!」

もはや習慣的にそう言って体育館に足を踏み入れると、高く可愛らしい声が返ってきた。

「おはようございます!」

おや、スズサンが今日は寄って来ないな。

いつもは「黄瀬先輩、今日も素敵ですね」とかなんとか言って、今やってる仕事も放って向かってくるのに。

そう思ってスズサンの方を向いて驚いた。

スズサンがやっているのは、中村センパイの練習の記録付けだ。

「こんなの、必要性を感じません。必要なら、神崎先輩がやってください」とかなんとか言って、自分は絶対にやらないと言い張っていたのに。

更に彼女の横にはみわが立っている。

一体、何が?



「おはよ、みわ。……練習出て、大丈夫なんスか」

そっと近寄って、みわに話しかける。
スズサンは集中していて、オレが来ても見向きもしなかった。

「うん、ギプスでちゃんと固定されてるから、痛みはないし大丈夫。心配かけて、ごめんなさい」

そう答えたみわは、昨夜別れた時のように放心状態ではなく、ちゃんと意志を持った目になっていた。

「今、私に出来る事をする。だから黄瀬くんは、プレーに集中して」

力強い微笑みだった。



オレが惚れた女の子はこんなに強かったのか。

オレの後ろで守られてるだけの子じゃなかった。

一緒に並んで、同じ方向を向いていける女性。

惚れ直したっスよ、みわ。


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