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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第66章 和


「ご馳走さまでした」

「はい、お粗末様でした。お茶でも淹れようか」

「ありがとう。……おばあちゃん、私明日から、朝練はいつもより早く行こうと思うの」

コポコポと、電気ポットから急須へ落ちるお湯の音が心地よい。

フタをして少し蒸らした後、湯呑にお茶を注ぎながらおばあちゃんは怪訝そうに眉を顰めた。

「今朝は陽が昇る前から行ってたじゃない。そんなに早く行かなきゃいけないの?」

「……明日からは無理がないように、始発で行く。片手でも、時間を掛ければ出来る事っていっぱいあると思うから」

「怪我してるんだから、みわがひとりで頑張ることないじゃない。誰か、他に周りに頼れる人はいないの?」

「でも……迷惑、かけたくないから」

温かいお茶が、疲弊したこころにじわりと沁みた。





翌朝、始発電車に私は乗っていた。

朝が早いというのにおばあちゃんは起きて朝ご飯を作ってくれた。ありがたい。

おばあちゃんだって決して自由な身体ではないのに。
早く怪我を治して、元通りに動けるようにならないと。



電車を降り、ホームを歩いていると少し前に海常の制服が見える。

おまけに女子だ。

こんな時間から、朝練だろうか?

何部の子かな、なんてなんとなく考えていたけれど、学校も目前となって距離が詰まると、その背中が見覚えのあるものである事に気付いた。

「……スズさん?」

スズさんは振り向くと、驚いたように目を見開いて、それからバツの悪そうな顔をした。

「……おはようございます、神崎先輩。
監督の話だと、暫く練習はお休みするはずじゃあ」

「うん、監督からは休んだ方がいいって言われたんだけど、大事な時期に休んでいられないしね」

「そ、そう……ですか……」

彼女にしては珍しく、今日は歯切れが悪い。

「今日は早いんだね」

「……わ」

「ん?」

「……私にも、何か出来る事がないかって……」

そう言って耳まで真っ赤にした彼女。
こんな姿を見るのは初めてだった。


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