第66章 和
「みわッ!!!」
倒れている3人に駆け寄ると、一番上になっているスズサンが起き上がった。
「ったー……」
手にはシーツのような大きな布を持っている。
これに足を取られたのか?
「スズサン、怪我は?」
「あ、大丈夫だと……」
無事だったスズサンにはどいてもらって、その大きな布も放り投げた。
「みわ! キオサン!」
ふたりとも、動かない。
以前の事件がまるでフラッシュバックのように蘇り、オレの手は震えていた。
「きゅ、救急車ッ!」
誰かの声が響き、辺りが騒然とする。
「みわ!!」
「うぅ……」
起き上がれない状態のみわを、優しく起こす。
「みわ! 大丈夫っスか!?」
「イ、イタタ……」
みわは、左手首を押さえている。
「みわ、見せて」
「私は大丈夫……キオちゃんを、お願い」
そう言われてキオサンの様子を確かめるが、下敷きになってしまった彼女の意識はなかった。
「キオサン」
揺らさぬよう身体を起こすと、浅いながらも呼吸は確認できた。
遠くからサイレンの音が聞こえる。
ああだから、ちゃんと応急手当でも出来るようになっておかねばならぬのに。
倒れていたみわを見た途端、彼女がオレを庇って刺された時の情景がリアルに頭に浮かんで、軽いパニック状態になってしまっていた。
救急隊員の姿が見えた。
既に周りには人だかりが出来ており、先生達はその集団を宥め、散らす事に集中していた。
みわに状態を確認している救急隊員に、小さい声で話しかける。
極力小さく、周りに聞こえないように。
「……倒れている彼女は、妊娠しています」
隊員は少し驚いた顔をして、分かりましたと頷いた。
「……え……」
みわも、驚いてオレを見ていた。
「……みわ、後でちゃんと話すから」
3人は、一度病院で検査をする事になり、搬送されていった。
結果、スズサンは足に軽く打撲。
キオサンは頭を打っていたので心配だったが、特に異常はなく身体の打撲程度で済んだようだ。
ふたりに挟まれる形になったみわは……左手首を骨折していた。