第14章 花火
何度かお借りしている黄瀬家のバスルーム。
またまた、洗濯機まで借りる始末。
下着まで汗でビショビショなのが気持ち悪くて……。
洗濯物を入れて洗剤と柔軟剤をセット、ピッピッとモードを選んで、っと……
「あっみわっち、俺のも洗って欲しいっス〜!」
ガラッというそれが一瞬それが何の音だか分からずに、全く反応ができなかった。
「……あっ……」
顔を上げると、そこには頬を染めた……黄瀬くんの姿が。
脳が一斉に処理を始める。
待って。
今、洗濯機に入れたのはなんだっけ。
今、私の格好って……。
「……っきゃあああああ!」
慌てて胸を隠してしゃがみこむ。
「わ、私、カギ、かけ忘れてた……」
うそうそ今見られた!
絶対、全体的に見られた!!
「ご、ごめんみわっち」
「……」
「……」
彼が脱衣所を出て行く気配はない。
「ちょちょちょっと、あの、洗濯物入れた!?」
「……入れたっスよ」
ピッピッという音とともに、洗濯機が回り始める。
顔から火が出そうだ。
お願いだから、早く行って!
「みわっち、一緒に入ろ?」
「へっ」
……一緒に? どこに?
「オレも服今入れちゃったし。湯船にもお湯張ってるし。だめっスか?」
……だめ? なにが?
……え……
「え、だめだよだめだめだめだって、だめに決まってるでしょ! さっきだめって言ったもん!」
「……ダメって連呼しすぎじゃないスか?」
黄瀬くんが身体を寄せてくる。
高い温度に、微かに汗のにおい。
脳みそはもうフル回転だ。
パンクしそう。
「ちょっともう、ホントに黄瀬くん、あのあの私ね、慣れてないのですこういうの。彼氏とか、出来たことないから……っ!」
「知ってるっスよ、オレが初めてでしょ? つか、オレだって別に慣れてるわけじゃないっスよ。ただ、ラブラブしたいな〜ってだけ」
一瞬だけ、あの寂しそうな顔になった。
ほんの一瞬。
ねえ、その表情の意味は、なに……?
どうして、気持ちを試すようなこと、するの?
「わ、私、すぐ出るからね。それでもいいなら……」
「やったね!」
先ほどまでの切なげな表情から一転、既にワンコモードだ。
甘い? 甘いかなわたし?
あの顔されると、断れなくて……。