第14章 花火
近所のスーパーに2人で足を踏み入れると、花火コーナーは子ども用から大人用、少人数用から大人数用と、それはそれは凄い品数だった。
こんな風に買いに来た記憶がないし、知らなかった……。
「こ、こんなに多いんだね……」
「みわっちとオレで、1個ずつ、せーので選ぼうか」
「……うん。そうでもしないと決まらないね」
「いくっスよ。せーの!」
せーので手に取った花火は、まさかの2人とも同じものだった。
「え……」
「みわっちも? ぶっ、うそだろ、ありえねー! おまけになんで2人とも"線香花火セット"なんスか!」
太いものから細いものまで、色とりどりの線香花火が入ったセット。
つい目を惹かれて取ってしまった。
「だ、だってこれが一番綺麗だったから……」
「これじゃ一晩中でも使い切れないっスね。片方は違うのにしよっか……これは? 置いとくだけでなんか華やかそうなやつ」
筒状になっていて、点火して置いておくと派手な花火が飛び出す作りになっているようで。
派手って、どんなの?
なんだかワクワクする。
「あ、カワイイ。それにしようか。置いておくだけでキレイなんて、いいね」
「そこを面倒臭がるって、オレ達……なんのために花火やるんスかね……」
「気分が大事だよ。黄瀬くん」
似た者同士の2人、目を合わせて笑い合ってからその場を離れ、後は飲み物と少しおやつを買って、店を出た。
「あーあっちー! 一旦家帰って、涼しいとこでのんびりしよっか」
ジリジリと肌を焼く太陽の攻撃は緩むことがない。
「そうだね……あっつ、焦げそう……」
「この暑い中ラーメンに誘ったオレが悪かったっス! 汗止まんねー!」
「あはは、確かに! 汗だくだね!」
家に戻ると、汗が吹き出してきた。
「クーラーつけるから待ってて」
「ありがと、飲み物飲む? 早速だけど」
「飲むっスわ〜。みわっち、先にシャワー浴びる? 汗冷えちゃうし」
「えっ、あっ、ああ、借りようかな!」
な、なんか本当に部活の時みたいにかる〜く言うから、何かと思ったら……
「なに、一緒に入りたいんスか?」
「えっ、い、言ってないよ!」
「なーんだ」
黄瀬くんはホント、どこまでが冗談か全然分からないのが焦る……。