第65章 星空
「ねえみわちゃん、みわちゃんが悩んで苦しんでいるのはとっても分かる。
でもお願い、きーちゃんの事は信じてあげて」
「……」
「……私ね、みわちゃんが、きーちゃんの事を涼太って呼ぶようになったのも凄く嬉しいんだ。ふたりの距離が縮まってるんだなあって」
大きくて赤くキレイな瞳を揺らしながらそう言ったさつきちゃんは、とても優しい笑顔だった。
自分でも、どうしてこんな風に思ってしまうのかが分からない。
自分ではどうしようも出来ない。
人を信じる事がこんなに難しいなんて。
何も問題がなく上手くいっている時は、いい。
気持ちも安定していて、なんでも出来るような気持ちになる。
でも、何か問題が出るとすぐに疑心暗鬼になって、疑って。
こんな醜い自分なんて、知りたくない。
さつきちゃんは涼太の事を信じられているのに、彼の近くにいる自分はそれが出来ない。
それが凄く悲しくて、虚しい。
前回の例もあるし、遅くなると危ないからと、さつきちゃんとは1、2時間お喋りをして別れた。
練習帰りのところ、付き合わせてしまって悪かったな。
駅に向かっていると、ポケットの中でスマートフォンの振動を感じた。
涼太?
つい期待をしてしまい物凄い勢いでスマートフォンを取り出したけれど、画面に出ている表示が異なる名前と気付いて、思わずため息をついてしまった。
「……もしもし? 黒子くん?」
『ご無沙汰してます、神崎さん。突然で申し訳ありませんが、これから会えませんか』
「こんばんは、神崎さん。突然すみません。ボクがそっちに行くつもりだったんですけど……」
黒子君に今居る場所を告げると、すぐに会いに来てくれた。
久しぶりに会ったけれど、消えてしまいそうな存在感は相変わらず……だけど、以前よりもどこか自信に満ちている表情にも見える。
「あ、たまたまこっちに来てたから。さつきちゃんとお茶してたんだよ」
「桃井さんとですか?」
そう言った黒子くんの髪は濡れている。
「うん、そう。誠凛は今練習終わったところ?」
「いえ、今日は半分トレーニングのようなオフのようなものでした」
「?」
その不思議な表現に想像は追い付かなかったけれど、学校ごとに色々な練習があるんだろう。