第65章 星空
まさかの単語に、つい聞き返してしまう。
涼太の初恋?
「うん、きーちゃんは、みわちゃんが初恋だよ」
「どういう事? さつきちゃんはどうして知っているの?」
詰問しているみたいな口調になってしまっているのには自覚があるけれど、聞かずにはいられない。
「どうして……っていうか、中学時代のきーちゃんを見てれば分かるもん。
きーちゃんは、自分から何もしなくても女の子の方から好きになって貰えたし、告白も毎日のようにされてた。
それで結構沢山の女の子と付き合っているのを見てたけど、あんな風になったきーちゃんは一度も見た事なかったよ」
「……あんな、風に?」
「それが、この間のテツ君のお誕生日会の時。
もう、みわちゃんの話になると顔色変えて嬉しそうで。
時々、すっごい愛しいものを見るような優しい顔になって……あんなきーちゃん、見た事ない」
そんな風に言われて、顔から火が出そうになるほど恥ずかしい。
「みわちゃん、愛されてるんだから自信持ちなよ、大丈夫だよ」
「……涼太は、私の事が好きだから一緒に居てくれているんじゃ、ないと思うんだ」
大きな丸い瞳が、驚いたように見開いた。
「何? それ、どういう事?」
「……さつきちゃん、"魔性"って知ってる?」
「ん? 魔性の女とかそういうの?」
「そう、それ。私、それなんだって。だから男性を惹きつけてしまうんだって。
だから、涼太もそれに惑わされているだけなんだと思う」
「……みわちゃんそれ、誰に言われたの?」
「もう、小さい頃からずっとお母さんに言われ続けてる。だから、そうなんだと思う」
もう、考えるより先に染み付いていた。
思い出してからは、ずっとそれに囚われている。
さつきちゃんも、眉間に皺を寄せて考え込んでしまった。
「ちょっとそれは、根が深そうだね……」
「だから私、涼太には目を覚まして欲しくて。こんな私に、惑わされないで欲しいの」
「みわちゃん、それは考えすぎだよ。きーちゃんはちゃんと、みわちゃんを見て好きになってると思うよ」
「でもそれが、違うんだよ。そう思い込んじゃってるだけなの」
「……みわちゃん……」