第65章 星空
「みわちゃん! 久しぶり!」
桃色の髪をさらりと翻し、桃井さつきちゃんは今日も溢れんばかりの魅力を振り撒いていた。
「さつきちゃん、久しぶり。元気してた?」
「みわちゃん、テツ君の誕生会も来れなかったもんね」
「ごめんね、部活終わったばかりで疲れているでしょ」
1日休養日。
今日、午前中からお昼過ぎにかけてはあきとランチをしていたけど、その後彼氏とデートをするというので、夕方には解散になってしまった。
普段のクールな彼女とは違い、彼と会う為にオシャレをして少し浮かれている姿を見て羨ましくなってしまったのは事実。
解散した後もどうしても1人でいると煮詰まってしまって、さつきちゃんに声を掛けた。
桐皇は普通に練習がある日だったようなのだけれども、何かを感じ取ったさつきちゃんが、練習後にこうして会う時間を取ってくれていた。
「どうしたの? きーちゃんの事?」
1発目の話題からこう振ってくる辺り、流石としか言いようがない。
「……分かる?」
「だってみわちゃん、見るからに元気ないんだもん。今日は海常、練習休みなの?」
自分ではポーカーフェイスを徹底できていると思ったのに、まさかそんな風に見られているなんて。
「うん、今日は1日休養日なんだ」
「きーちゃんは?」
その名前1つで愛しい人の顔が容易にパッと頭に浮かぶ。
もう、病気としか言いようがない。
「……なんか、1日用事があるって今日は会えないんだ」
「そうなんだ。それが不安なの? 今までそういう事はなかったの?」
「今まで……会えない時は勿論あったけど、理由を敢えて教えてくれないのは初めて。いつもは、聞く前に教えてくれるのに」
そう。いつもは、私を心配させないように、会えなかったりする時には必ず涼太の方から教えてくれた。
それが、違和感を抱くきっかけになったんだ。
嘘でもあの時、会えない理由を言ってくれていたら、こんな風に不安になる事もなかったかもしれない。
「きーちゃんって、そういう所分かり易いよね」
「……そうだね、本当に器用なんだか不器用なんだか分からない人」
2人で目を合わせてクスクスと笑った。
「きーちゃんはね、多分みわちゃんが初恋だろうから、不器用にしか出来ないんだと思うよ」
「……初恋?」