第65章 星空
プールサイドへ上がったオレは、黒子っちに駆け寄った。
「黒子っち、な、なんで……こんなトコで何してんスか」
「カントクの……リコさんのお父さんがここの経営者と仲が良くて、たまにこうして優待券を貰えたりするんですよ」
「へ、へえ」
「黄瀬君こそ、こんな所で……その人と、何してるんですか」
「あ、これはウチの今年入ったマネージャーで」
「りょーた君の新しい彼女です! よろしくお願いします!」
誠凛のメンバーだと気づいているのかいないのか、スズサンはオレの腕に絡みつき、自慢の胸を押し付けてきた。
黒子っちや火神っち以外の誠凛メンバーの視線が谷間に集まっているのが分かる。
「ちょっとマジ、いい加減にしてスズサン」
「もー、そんなに照れなくてもいいのにぃ」
「……楽しそうですね」
黒子っちは、相変わらず感情の読めない瞳でオレを真っ直ぐに見つめている。
「黒子っち、違うんだって!」
「……まあ、キミが誰と付き合おうが、ボクには関係ありません。火神君、行きましょう」
「おっおい黒子、いいのかよ!?」
黒子っちはそうとだけ言うと、火神っちをはじめとした皆を引き連れて去って行ってしまった。
「……先輩、誰ですか?」
「東京の誠凛のメンバーっスよ、去年ウィンターカップ優勝したの、知ってるっしょ」
「ええッ! 先輩、こんな風にお喋りしたりするほど仲がいいんですか!? 凄いですね!」
もう全く見当違いの部分で驚いている。
あれだけ普段からみわの近くで仕事をしているのに、他校の事についてはてんでダメらしい。
「サイアクっスわ……絶対勘違いされた……」
「わたしは勘違いされても構いませんよ? むしろ大歓迎です!」
後でちゃんと弁解しないとな……。
なんでこんな、悪い事ばっかり重なるんだろ。
オレは何か大きな間違いを犯しているのだろうか?
「ね、先輩。折角上がったんだし、お昼にしませんか?」
スズサンに手を引かれ、プールサイドのレストランへ向かう。
もうオレは、ガッカリした表情も大きなため息もガマンせずに出す事にした。