第65章 星空
中庭は日当たりがいい。
白いベンチに日光が当たって周りを明るくしているし、中央にある大きな噴水の流れる音にとても癒される。
緑が多いのも特徴だ。
きちんと手入れされた植木達があちこちに配置されていて、見通しは少し悪いかもしれないが、人に疲れた時なんかは気分転換になる。
時々ひとりで来る癒しスポット。
……大概すぐ女子に囲まれるから、長居はできないんスけど。
流石に直射日光は色々優しくないので、少しだけ日陰になっているベンチを選んだ。
「私、ジュース買って来るね」
「うん。オレここにいるっス」
すぐそこの自販機に向かうみわを目で追っていた。
形のいいお尻と足なのに、走る姿はやっぱり転びそうで。
思わず口角を上げながら観察してしまう。
ボタンを押して、取り出し口からジュースを取ろうとする姿に釘付け。
そんなに前かがみになったら、パンツ見えるっスよ?
ただでさえ1年で随分身長も伸びたみたいだし、スカート丈が短くなってるんスから。
って、オレは親父か。生活指導のセンセイか。
みわは何故か両手にジュースを持って帰って来た。
「随分飲むんスね」
「はい、これ」
そう言って差し出されたのはフルーツジュース。
「この間、これ飲んだら美味しかったからリピートしたいって言ってなかったっけ」
「あ、あぁうん、言ってたっス。いいの? ありがとう」
みわは、本当にちょっとした事でも記憶していて驚く事が多い。
もはやオレよりもオレに詳しいのではないだろうか。
それを自然にしてくれることが、心から嬉しい。
そう思うと、オレはみわについては分からない事だらけだな。
……キモチイイポイントならよく分かってるんスけど……
隣には、髪をかき上げながらストローに口をつけるみわ。
あのふにふにの唇が、すごく気持ちイイんスよね。
昼間っから思い切り煩悩だらけになっている頭を一振りした。
「ごめんね、昨日折角来てくれたのに会えなくて」
「あ、ううん。私こそ」
「今日、埋め合わせしたいんスけど……オレの部屋、来ない?」
このお誘いは露骨だろうか。
「ごめんなさい、今日はちょっと……」
「そっか、じゃあまた今度」
……なんとなくいつもと違う空気なのは、オレの考えすぎか?