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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第65章 星空


「じゃあ先輩、1日わたしとデートして下さい」

「……なんか突然ハードル下がったっスね」

いや、上げられても困るけど。

「だって先輩が頑固だから、仕方ないじゃないですか」

「……そのくらいなら」

「本当!? やったあ!」

「じゃあ、金輪際この話題はもう出さない事でいいっスね」

1日オレがガマンすればいい話だ。
今の皆の努力をこんな事で棒に振られては堪らない。

「うふふ、一度火が付くともう消せないんですよ」

「なんだって?」

「いえ、こっちの話です。次の休養日でいいですか? 楽しみだなあ!」

スズサンは、そう言って楽しそうに戻っていった。

「……はぁ、みわに癒されたい」





「みわ!」

みわのクラスに行き、入り口から呼びかけると彼女は驚いた表情でこちらを向いた。

周りの女子からの目線はイタイが、もうそんな事も気にしていられない。

「あ、黄瀬くん。どうしたの、何か用?」

学校用の対応だ。
涼太、って呼んで欲しいというのにそれは頑として聞き入れて貰えないようだ。

「ちょっとみわの顔見たいなって思っただけ」

しかし、みわはなんだか元気がない。

「中庭にでも行かないっスか」

「う、うん分かった。今行くね」

スラリと長い足を翻して、一度教室に入ったみわは財布を持って戻ってきた。

「あれ、まだ昼食べてないんスか?」

「……あー、今日はあんまり食欲なくて。
中庭に行くなら、自販機で飲み物でも買おうかなって」

よく見ると、目の周りが赤い。
今日も眠れていないんだろうか。

「大丈夫? 寝てないなら無理に行かなくていいっスよ。
ちょっとお昼寝したら?」

「ううん、大丈夫」

そう言って、オレの少し後ろからついてくる。

「みわ、ん」

手を伸ばすと、一瞬躊躇っている姿。

「手、つなご」

「……えっと……」

なんだか煮え切らない様子だ。
学校だろうがどこだろうが、これからは手を繋ぐのなんてガマンしないっていつも言ってるのに。

グイッと細い手を取って歩き出そうとして、驚いた。

「みわ……手ェ冷たいっスね」

「……そう? 冷えちゃった、かな」

もう5月だと言うのに。

オレの熱が少しでも移るように、強く握りしめた。


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