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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第65章 星空





……目の前で起きている事は、一体なんなんだろう。

涼太が、キオちゃんと抱き合ってる。

無理矢理、じゃない。

今、涼太の方から抱きしめてた。



どうしても会いたいなって思って、お買い物に行ってるだけなら、帰って来た時に顔だけでも見れるかなって。

ちょっとストーカーっぽいとは思いつつ、部室に忘れた忘れ物を回収してから、寮の入り口で待ってた。

そうしたら、涼太とキオちゃんが手を繋いで歩いてくるのが見えて。

思わず、隠れてしまってた。



どうしてふたりが一緒に居るんだろう。
たまたまそこで会った?

それにしたって、手を繋いで……恋人同士みたいに抱きしめて、っておかしいよね。

ふたりはまだ抱き合ったままだ。
顔は見えない。

そのままキスでもされたらとても立って居られる自信がない。

もう見ているのが辛くて、その場を去った。



「あれ、神崎?」

駅に向かって無我夢中で走り続けていると、聞き覚えのある声に呼び止められた。

「中村……先輩?」

「どうしたんだよ、こんな時間に」

そうだ、中村先輩も寮に入っているんだった。

「あの、部室に忘れ物をしてしまったので、取りに……先輩こそ、お出かけですか?」

「ああ、ちょっとコンビニまで。帰り道、ひとりで大丈夫か? こんな暗い中」

「だ、だいじょうぶです」

先輩は特に他意もなく"大丈夫か"と聞いただけなのに、私の網膜には抱き合ったふたりの映像が再生されていた。

「……神崎?」

「あ、すみません、私なんで……」

手が痺れるような感覚に陥って、目からは勝手に涙が溢れていた。

「おい、本当にどうしたんだよ。黄瀬に声かけようか」

「いえッ、いいんです、すみません帰ります……!」

「神崎!!」

グッと手首を掴まれる感覚。
でもこの間の公園の男と違って、そんなに力が入っていない。

「待てよ、そんな状態でひとりにしておけないだろ」

「ホントに、大丈夫です」

お願い、今優しくしないで。

「俺、聞いてやるくらいしかできないけど、良ければ」

「っ…………、ありがとうございます、先輩。でも私、帰ります……!!」

甘える事も出来ない。
今、胸の中がぐちゃぐちゃすぎる。

中村先輩の手を振り払って、走った。


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