第14章 花火
折角のオフなのに。
なんでこんな雰囲気にしてしまったんだ。
悲しそうなみわっちの顔が見れなくて、今、背を向けて座ってしまっている。
期待するから、分かって貰おうとするから苦しい。
やめればいいんだ。いつも通りに笑っていよう。それでいい。
と決めた……諦めた瞬間。
柔らかい香りがオレを包んだ。
みわっちが俺の背中に頭を預けているようだ。
「……嫌な言い方しちゃってごめんなさい。何か悩んでる事があったら言って……?」
「……なんで謝るんスか……オレの機嫌取ればいいと思ってる?」
「え……何、言ってるの?」
「オレをテキトーに気分良くさせてればいいって思ってるんじゃないスか?」
オレ、またやってる。
いつかみたいに、みわっちを攻撃してる。
「……怒るよ」
「怒ればいいじゃないスか。怒って、オレの事嫌いになって別れればいいんじゃないスか……!」
「黄瀬くん!」
前に回ってきたみわっちが、オレに突然キスしてきた。
「ちょ、みわっち、何」
「黙って!」
顔を紅く染めながら、一所懸命慣れないキスをする彼女に、オレの奥の方から何かが湧き上がる。
「黄瀬くんの……ばか……すきだから……知りたいから、聞くんだよ、怒るんだよ……」
目に溜まった涙が流れ落ちるのを見て、オレの目頭も熱くなる。
期待しちゃだめだ。他人は他人。
自分の気持ちを分かって貰うなんてできるわけない。
「言ってくれなきゃ分からないもん……わ、分かってあげたいけど、でも、やっぱり言ってくれなきゃ……」
……みわっち。
好きだよ。好きだ。
だからオレ、嫌われたくない。
幻滅されたくない。どうしたらいい?
こんなみっともない事、言えるわけない。
目を開けると、ぐっしゃぐしゃの顔で必死なみわっちの顔。
「みわっち、鼻水出てる」
「え、わ、やだ」
飾ってない、みわっちは本気だ。
分かるのに。分かってるのに。
オレは、素直にオレをぶつけられない。
「ふっ……みわっちすげー顔してる」
「言わないでー!」
「……ごめん。今は……なんか上手く言えねー……」
鼻を啜るみわっち。
「うん……じゃあ、とりあえず塩ラーメン、食べに行こっか」
その笑顔にはホント、敵わない。