第65章 星空
「……はぁ、……はあ……」
何度か深く息をついて、ようやく落ち着いてきた。
涼太が、汗で濡れた髪を梳いてくれる。
彼に髪を触られるのは本当に気持ちが良くて、大好き。
「みわ」
まるで歌うかのように柔らかく、降ってくるように聞こえる、自分の名前を呼ぶこの声が好き。
優しく包んでくれる筋張った腕も好き。
大好き。
ぜんぶ、だいすき。
「涼太……好き……」
「みわ……アリガト……オレも……」
スキ、は耳元で囁かれた。
擽ったくて、私だけに聞こえたその声がとても嬉しい。
「今日、楽しかったよ……凄く。
あんな気持ちになったの……はじめてだったよ」
「そう? オレもみわと居られて、すげー楽しかった」
髪を梳いていた手が頬に触れる。
ぷにぷにぷにとつままれた。
「なっ、なに?」
「んーん、なんでも。みわは柔らかいなぁって」
「し、身長は伸びたけど太ってないよ!?」
「むしろ痩せたでしょ。気付いてるっスよ?
この間抱いた時よりも細くなってる」
長い指が腰を撫でる。
「あっ……少し……だけだもん……っ」
「だぁめ、ちゃんと食べて」
たかが2キロ程度なのに、気付かれてるなんて……。
「眠れてないのも、食べれてないのも大丈夫なんスか? 本当に……」
労わるようなその手つきが心地いい。
倦怠感が纏う身体から、力が抜けてくる。
瞼が既に重い。
心配そうにこちらを見つめている涼太の顔が、段々見えなくなってくる。
「だい……じょうぶ……」
腰を撫でていた手が、頭を撫で始めてくれる。
その温かく優しい感触が胸にじんわりと沁みて、意識は遠くなっていった。