第1章 出会いは突然に…?
「嘘、だろ…!?」
食事中にも関わらず、フェリアは危うく椅子から転落しそうになった。
それ程に、衝撃の一言だったのである。
「本当ですよ。俺は魔術師です。家も代々、魔術師の家系です。」
それは、昨日の決闘で傷ついたフェリアの心をさらに抉るには十分すぎた。
-騎士でも、武闘家でもない…!?
そう、魔術師の男に負けたという事実である。
「フェリア、大丈夫ですか?
顔色がすぐれないようですが…」
ぴた。
冷たい感覚が、頬を走る。
それがレイシスの掌であることに気づくのに、そう時間はかからなかった。
「なっ…!」
みるみるうちに頬を紅く染めるフェリア。
それもその筈。
幼い頃から男の子たちに混ざって剣術や武道の稽古をしてきたフェリア、異性に「強い奴」、「戦いの相手」としか見られていなかったとしても当然である。
「わ、私は、大丈夫だ…から、早くっ…!」
手を、という前にレイシスの手が離れたので、フェリアはほっと胸をなで下ろした。
よく見ればレイシスは、なかなか美しい顔立ちをしている。
朝日を浴びて輝くブロンドの髪、透き通るような肌、空の色を映し込んだような蒼い瞳…。
しかしフェリアはすぐ我に返り、今の思考を彼方へと追いやった。
目の前には、フェリアの心中の荒れ模様など何処吹く風、という具合に、変わらぬ微笑みをたたえるレイシス。
「そうですか。それなら良かったです。」
思えばレイシスは、不思議な男である。
半ば強制的に宿屋へ連行された時は、ただでは帰れないだろうと思っていた。
だが蓋を開けてみれば、同室とはいえシングルベッド2つであったし、事実、フェリアの身には何も起きなかったのだ。
では、なぜ…??
そんな思考も、レイシスの言葉で全て吹き飛ばされてしまった。
「今日はフェリアに、着いてきてもらいたいところがあるんです!」