第2章 恋人
しずくside
いつもと同じ車の中。
いつもと同じ香水の匂い。
いつもと同じ人の隣で。
私はいつも通り笑っている。
「 しずくごめん。ごめんな。痣、まだ消えてない。痛かっただろ?ほんと、ごめん。」
そういって、私の口元に優しく触れる。
「うんん。りょー君は悪くないよ。私がいけなかったの。」
りょー君は私の恋人。
優しくて、かっこよくて、大人で、趣味もよくて、明るくて、すごくいい人。
ほんと、私にはもったいないくらいに。
「会いたくて。今日もいきなり無理言ってごめん。それなのに、俺、また。腕大丈夫?腫れてない?」
「うん、大丈夫だから。気にしないで。」
痛い。
胸がジリジリする。
こんなにいい人を泣かせてしまったことに胸が痛む。
「今日、本当に帰っちゃうの?泊まってったら?」
「んー、明日も学校だから。」
「そっか。また、学校終わったら連絡して。迎えに行く。」
「うん。あ、ここまででいいよ。あとは、1人で帰れる。」
そう言って私は車を降りた。
「じゃあな。」
りょー君は行ってしまった。
りょー君の車はもう見えない。
「....... 桜山さん?」
振り返るとあの人がいた。