第7章 @ 黒尾鉄朗
「よしっ行くか。」
そう言って黒尾は着ていたジャケットを脱ぐ。
『…はい?』
「え?」
『…それ、なんで脱いだの。』
「ずぶ濡れ防止。」
絢は目を丸くしたが、黒尾はまるで当たり前だろとでも言いたげな表情をしている。
「鞄、ちゃんと抱えてろよ?中身濡れるからな。」
『クロはどうするの…』
「俺は濡れても平気。」
そう言って黒尾は自分の着ていたジャケットを絢の頭に被せた。
それを絢はすぐに振り払う。
「…風邪引くだろ?」
『クロも風邪引くでしょ。』
「馬鹿は風邪引かないから平気だろ。」
『どうせなら一緒に風邪引こうよ。』
真顔で言う絢がおかしくて、黒尾は思わず吹き出す。
ぷくっと頬を膨らませて怒る絢の頬を指でぷにぷにした後、被せようとしたジャケットを二人で被るために、黒尾は腰を屈める。
「…辛かったら言えよ?」
そう言って黒尾は絢の肩を抱いて雨の中を走り抜けた。