第11章 オマケ
「ちょっと!裕太!待って!」
「パパ遅いー!」
『徹へこたれるの早すぎる!』
結婚して6年、今じゃ子供は4歳で、お腹にはまだ小さな二人目がいる。
桜が咲き乱れる公園で、バレーをしようと、徹はボールを持って張り切っている。
息子の裕太は体の割に少し大きなバレーボールを持ちながら桜並木を走る。
「こらっ捕まえたぞー!」
「うわあー!ママ助けて!」
「うわあー!ママ星人だー!」
『誰がママ星人よ!!』
そう言いながらも絢は笑っていた。
お弁当を食べ終わってから、徹と裕太は芝生でバレーを始める。
裕太の近くにしゃがみ込んで、裕太を応援する。
やっぱり徹はバレーがうまい。
裕太はなかなかボールを取ることが出来ず、だんだんいじけ始めた。
「裕太ーもう一回やる?」
「んー、パパなんでそんなにバレーがうまいの?パパは天才だから?」
未だに徹は、【天才】という言葉に引け目を感じていた。
次第に徹の表情が曇っていくのを感じた絢は、裕太の元に駆け寄って頭を撫でた。
『違うよ裕太。パパは天才じゃないよ。頑張ったの。』
「がんばった…?」
『うん。パパは天才じゃないけど、めいいっぱい頑張って、こんなに強くなったんだよ。だから裕太も大丈夫。パパみたいに強くなれるよ。』
「ほんと…?」
『ほんと!ね!パパ?』
「えっ…あ…うん!そうだよパパ頑張ったんだよ!」
徹の表情が元に戻っていく。
ドヤ顔をする徹の腰を肘で突き、目配せをすると、徹はウヘペロッとしてみせた。
「その…ありがとね。やっぱ絢って凄いや。」
帰り道、もうすっかり空は赤くなっていて、裕太も徹の背中でスヤスヤと眠っている。
手を繋いで、行きに来た桜並木を歩く。
『何年一緒にいると思ってるの。流石に分かるよ。』
「そっか。」
『にしても裕太の前でそんな顔しないでよ…』
「あはは…ごめん…」
徹が苦笑いをすると、強い風が吹いて、桜の花びらが一気に吹雪く。
『桜吹雪…綺麗…』
「…絢の方が、綺麗だよ?」
『んー?知ってる♡』
「可愛くない…」
『うそうそ。ごめんね。』
「いいよ可愛いから。」
そう言って及川は、空いている腕で絢の肩を抱いた。