第1章 BLUERAIN
部屋へ上げるとそのままお風呂に直行させた。風邪などひかれては困るから。彼は何も言わずにシャワーを浴びている。私はその間にタオルとバスローブを用意して、コーヒーを入れる。しばらくしてお風呂から出てきた彼は、ソファにどっかりと腰を下ろした。
「はい、コーヒー」
「いらね。酒あんだろ?飲ませろ」
「未成年には飲ませません」
機嫌の悪いときは大抵こうだ。でも私が頑として飲ませないからもっと機嫌が悪くなる。いつもならば。だけど今日は少しばかり様子が違う。何か考え込むように黙ってしまった。何かあったのだろう。こういう時はそっとしておいた方がいい。私も黙って隣に腰を下ろした。
どのくらいそうしていただろうか。テレビはいつの間にかニュースからバラエティーに変わっていた。彼は画面ではなく別の何かを見ているような目でぼんやりとテレビを見ている。私の分もコーヒーを入れようとして立ち上がると、不意に腕を引かれ抱き寄せられる。少しよろけて彼の膝の上に座る形になった。後ろから私をしっかりと抱きしめる腕。その彼の手にそっと手を重ねると、心なしか力が込められた。