第1章 BLUERAIN
昼過ぎから降り出した雨はまだ止みそうにない。午後9時。明日は久しぶりに何も予定のない休日だ。少しぐらい朝寝坊してもいいだろう。お風呂上がりのビールが美味しい。テレビをつけると天気予報がやっていた。雨は明日も続くらしい。これで気温も少しは下がるだろう。8月に入ってから連日続く猛暑の中休みは正直ありがたい。
ベッドの上で胡座をかきながらのんびりしていたら玄関のチャイムが鳴る。こんな時間に誰だろう。面倒なので放置を決め込んでいたが、何度も何度も繰り返し鳴るので仕方なくインターホンに出た。
「どちら様?」
「早く開けろ」
不機嫌な低い声が返ってくる。私のよく知る声の持ち主は青峰大輝という高校生だ。いつもフラリと現れては気がすむと帰っていく。ワガママで気紛れでオレ様で、淋しがりやな年下の恋人。
「どうしたの?大輝」
ドアを開けて驚いた。彼がずぶ濡れで立っていたからだ。パーカーのフードを被って雨よけにしていたのだろうけど、それすら無意味なほど全身ずぶ濡れだった。この雨の中傘もささずに歩いて来たらしい。