第2章 今宵月が見えずとも
何をするかわからないから。それは多分本当だろう。このまま一人にしておけば最悪のケースになるであろうことは想像に難くない。オレがいることでそれが防げるのなら、オレのぬくもりで彼女の傷がこれ以上深くなるのを防げるのなら。オレの想いは届かなくても彼女の役に立てるならそれでいい。
「わかりました。このままでは風邪を引きますからシャワーを浴びて着替えてきてください。オレもその後シャワーを借ります」
オレの言葉に頷いて、彼女は着替えとタオルを用意して浴室に消えていった。
肩から大きく息を吐く。まさかこんなことになるとはな。いや、期待していなかった訳じゃない。だが本当にこんなことになるとは思っていなかった。彼女が残していったカフェオレを一口もらう。オレには甘すぎる量の砂糖が入っているはずなのに、何故だか苦かった。