第10章 一日目
A little old story -Chapter one-
ーー今から四年ほど前の某日、C級ランク戦のブースにて、男女二人の姿があった。
『十本勝負終了。五対五、タイスコア。』
「くぁーっ! また引き分けなのねー! そろそろ勝ち越せてもいいと思うんだけどなぁ……。しぶとくアタシにしがみついてくるなんて、ちょっとみっともないよ、蒼也?」
「成長しているのはお前だけではない、という事だ。当たり前だろう、遠山。」
「あのね? 何度も言ってるけど、アンタとアタシじゃ目的が全く違うんだからね? 急ぐ理由があるからには、それなりに早く同期のテッペンに立ちたいわけよ。わかるでしょう?」
「気持ちが強ければ上達が早くなるという事もない。こればかりは誰に文句を言っても変わらんだろう。それに今回、俺に同レベルの戦いを挑めた事自体、類稀なる努力の成果が出ていると思うのだが?」
「そりゃそうかもしれないけどさー。たとえ条件変えても蒼也と戦った時の結果はいっつも同点じゃん。こんなのむしろ何かの陰謀じみたものを感じざるを得ないから。何よこれ。エンジニアの誰かの悪ふざけ的なやつ?」
「はぁ。」
「そうやって綺麗にかわし続けてればカッコいいとか思ってんのかしらねえ? アタシの幼馴染さんは……。」
「ふざけるのも大概ににしろ。真面目にやる気がないなら俺は一人でやる。」
「あー待って待って。まだこれとこれと……あ、あとこれも使ってみたい。トリオン兵はとりあえず倒せるから、あとは対人戦で通用するかなのよね。」
「それがふざけているんじゃないかと聞いているんだが?」
「至って大真面目だからね!?」
「銃手の十分な素質を持っていながら、今更なぜメイントリガーを取っ替え引っ替えする必要性があるのか、俺にはさっぱりわからない。この模擬戦に本当に意味があるのか?」
「当たり前の事を聞くのね。」
「どこが当たり前だ。」
「当たり前でしょ? 強さを追い求めるのに理由なんて要らなくない? 過剰に研究し過ぎてもなんの問題もない事でしょう? むしろ組織としては戦力が増えてご満悦ってとこでしょ。」
「……。」
「それにアタシ、誰の力も借りたいと思わないから。たった一人で出来る事をとことん増やしていきたいの。」