第10章 一日目
「前途多難だけど、やっぱこれにするしかないかなー。」
「正気か?」
「大事な武器選びをそんなテキトーに決めたりしないからね? まあ、アタシもちょっとまだどうするか決めてないんだけど。」
「C級で拳銃型にアステロイドを装備して使っていた頃と大分違う戦闘能力が必要になるはずだが。」
「ライトニング。悪くないトリガーだと思うけどなぁ。射程は他の二本に劣るけど、速射性と軽さが売りで……。」
「そうじゃない。いきなり狙撃手に転向するのかと聞いているんだ。誰の力も借りたくないと自分で言っていたはずだが?」
「そうだけど? 誰の力も借りたくない、ソロでやっていきたいから狙撃トリガーを選んだんだけど? カバー出来る範囲が増えれば増えるほど、倒せる敵も増える。」
「全ての敵を狙撃できるわけでもないだろう。地形や戦況によっては近距離戦が全くないとも限らない。そうなった時、狙撃手用トリガーで立ち向かうにはあまりに非力だと思うが。」
「要はこの銃で近距離戦にも対応できるようになればいいわけだ。いけるいける。」
「簡単に言うな。現に結果がこれだ。」
「十対零。蒼也との対戦で引き分けじゃないの、初めて見たかもね。なんか新鮮だ。」
「感想を聞いてるわけではない。」
「アタシは馬鹿じゃない。出来ないことはそもそも言わないし、望まない。それは腐れ縁であるアンタが一番よくわかってくれてると思ってたんだけど。」
「……。」
「上手くやる。だからアタシはこれでアンタより強くなってやるから。」
少女の挑戦は無謀極まりないものであった。けれど、エンジニアの元へ足繁く通いつめてはオプショントリガー制作、既存トリガーの強化に携わり、トリオン体でいれば疲れも軽減される、という事を逆手にとっての長時間の戦闘訓練。
生身で同じ事をすれば、何度過労死してもおかしくはない。
それ程までに強さに執着した結果、見事に有言実行してみせたのだ。